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最高裁判所第二小法廷 昭和23年(オ)170号 判決 1949年2月22日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人菊地養之助、北村文衞、逸見惣作、袴田重司の上告理由について。

地方自治法第一一五条第一項は普通地方公共団体の議会の会議はこれを公開する、但し議長又は議員三人以上の発議により出席議員の三分の二以上の多数で議決したときは秘密会を開くことができると規定しているから普通地方公共団体の議会の会議は公開を原則とし秘密会を開くことは例外であつて、秘密会を開くには議長又は議員三人以上の発議により出席議員の三分の二以上の多数の議決を要することは明かである。ところが原判決の確定した事実は本件石森町議会の会議において議員大坂京三が秘密会にしては如何と発言しこれに対し一人の異議を述べるものもなく議長において全員異議なきものとして採決の結果直に会議の場所を石森町農業会事務所楼上に移して秘密会を開くこととしたと云うのであるから本件秘密会を開くにつき議員三人以上の発議はなかつたのである。しかし前記の如く秘密会を開くにつき一人も異議がなく採決の結果秘密会を開くことに定めた以上その秘密会における議決を無効とすべき理由はない。前記地方自治法第一一五条第一項が秘密会を開くのに議員三人以上の発議を要するものとしたのは、みだりに秘密会の発議をすることを防ぐために規定したものであり三人以上の発議のない場合はこれについて可否を決する必要はない、三人以上の発議のある場合にはじめて同条第二項によつて、これについて可否を決することを要するものとしたに過ぎないのであつて、たとい一人の発議にもとずいても全員異議なく秘密会を開くことを採決した本件のごとき場合においては、その秘密会の成立、ひいてはその秘密会においてなされた議決を無効とすべき何等の理由もない。然らば右と同一趣旨に出でた原判決は正当であつて、この点に関する論旨は理由がない。

次に論旨は秘密会では議決ができない、議決はあくまでも公開の議場でなされなければならないと主張するのであるが、地方自治法には秘密会では議決ができない趣旨の規定は存しないのである。そして前段説明の如く一定の要件の下に秘密会を開くことを認めておる以上秘密会においても、議決を為し得るものと解すべきである。然らば原判決が本件秘密会の議決をもつて有効なものとしたのは正当であつて、この点に関する論旨も理由がない。

よつて本件上告は理由がないから民事訴訟法第四〇一条第九五条第八九条により主文の如く判決する。

この判決は裁判官全員一致の意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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